屍鬼
原作は1998年に新潮社から発行された、小野不由美のサスペンス・ホラー小説。
2008年「ジャンプSQ.」(集英社)にて藤崎竜の作画でコミカライズされ、2010年には漫画版を元にフジテレビ「ノイタミナ」でアニメが放送されました。
あらすじ
人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた――。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。
出典 新潮社:屍鬼〔一〕小野不由美/著
自分が初めてこの作品を知ったのは、元々読んでいた漫画雑誌「ジャンプSQ.」で連載が開始した時です。
一見ホラー作品とは思えない主要人物のキャラクターデザインと、逆にとてもリアルに描かれているモブキャラと背景に多少違和感を感じましたが、藤崎竜独特の雰囲気と画力の高さ、グロい、生々しい場面やホラーの場面はしっかり描かれていたので、最終的にはこの人の作画でよかったと感じます。
そしてこの作品、
大筋は同じですが原作と漫画でストーリー展開が大幅に違います。
・原作では物語の途中で死亡する人が漫画では最後の方まで生き残っている。
・起こる事柄の順序が違う。
・物語の主軸となる人物が異なる。 など
小説、漫画ともに群像劇であることには変わりないので明確にこの作品の主人公と言える人物はいませんが、各話ごとに主軸となる人物が原作とは異なっています。
小説、漫画、アニメ内容は若干違いますが、全て面白い。でも個人的には漫画・アニメ版のストーリーの方が好きなのでそちらをオススメします!
※若干ネタバレ含みます。
内容は簡単に言ってしまえば、
人間の血を吸って生きる屍鬼と屍鬼に対抗する村人との争いです。
実際に屍鬼と人間との直接的な争いが起きるのは物語の終盤なので、それまでは村で夏から続く不審死の原因は何なのか、疫病か、呪いか、それとも他の何かなのか。
その原因を突き止めていくお話です。
屍鬼に血を吸われ続けると失血死で死亡。死後4〜5日で屍鬼として蘇生してしまいます。確率的に蘇生しない人の方が多いですが屍鬼になってしまったら最後、人の血液がなければ生命維持ができません。人を襲うことに対して何の躊躇もない者もいれば、襲いたくないと葛藤するも結局受け入れる者もいて、最終的に誰も襲わなかった者もいます。屍鬼といえども、元々人間だったわけですからそりゃ躊躇しますよね。
逆に人間側からすれば、元は人間で身内や友人だったにせよ自分たちに害があるなら屍鬼を殺さないといけない。親が自分の息子を、娘が自分の親を殺してしまうシーンは何とも言い難い気持ちでした。
最初は殺すことを躊躇っていた人々も数を重ねていくうちに慣れ、中には感覚がおかしくなり屍鬼に操られている人間や関係のない人間まで殺してしまう人も。その場面は、ああ実際これが人間なんだろうなと色々深く考えさせられたのと、人間の怖さを感じました…。
あと、何と言ってもアニメ版ではサウンドがすごくいい(語彙力)。
屍鬼ならではの怖さと不気味さ、切なさがよく表現されているなと思います。
サントラを聴いているだけでアニメでの様々なシーンを思い出せます。
これ以上言葉にできない。
ジャンルはホラーですが、ほとんど人間ドラマがメイン(だと勝手に思っている)。
登場人物一人一人が個性的で心情描写もちゃんと描かれていて、屍鬼側にも人間側にも感情移入してしまうので自分は読むたびに泣きます。
生きる為に狩る、殺されない為に狩る。お互いに自分たちが生き残るための行為をしているので見ててどうしようもない、やるせない気持ちになるけど、でもだからこそ考えさせられる部分が多い、とても好きな作品です。
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